作品における、撮影工程の責任者であり撮影スタッフの管理をするのが撮影監督です。
まず撮影というのは、各セクションからあがった素材の組み立てが基本の仕事となるセクションとなり、そこに撮影処理を加えて最終的な映像にしていきます。

撮影監督はそういった撮影処理の部分を、監督や演出と事前に打ち合わせをし、どういう絵作りをしていくか、どのような雰囲気の映像にしたいかを詰めていきます。『マッシュル-MASHLE-』シリーズのようにキャラクターの実線を太くするといった、その作品特有の処理が出てきた場合は何パターンもテストを重ねて方針を決めたりもします。
そうして決めた処理やシーンごとの指針を撮影スタッフと共有し、カットごとのクオリティ管理をすることが撮影監督の役割となります。
また私の場合は大学でプログラムを学んでいたこともあり、業務に使用するスクリプトを自作することも多いです。

私たちが使用している「Adobe After Effects」というソフトは、ユーザーが自作したスクリプトを使うことができます。撮影は制作フローの終盤ということもあり、スケジュールがひっ迫することも多いです。複雑な処理を一つずつ足していくと間に合わなくなってしまうので、何度も出てくる処理はボタンを押すだけで反映されるようにスクリプトを組んだりして、ぎりぎりまで効率化を図っています。
正直アニメーション業界に入ってこんなにプログラムを書くと思っていなかったので、何が役立つかは分かりませんね（笑）

入社後はまず基本的な撮影作業を研修で学んでから、実際の業務の中で経験を重ねていきました。時には難しいカットも積極的に担当しながら、撮影マンとしてレベルを上げていきました。
私の場合は何本か撮影監督補佐を担当したあと、3年目の冬に『プリンセスコネクト！Re:Dive　メインストーリー第二部OP』ショートアニメーションで初めて撮影監督として携わらせていただきました。
その後も、補佐や撮影スタッフとして多くの作品に参加し、5年目の『ヴィジュアルプリズン』でTVシリーズの撮影監督を担当しました。

まずは監督とよく話し、作品のことを知ってベストな画面・処理を考えることです。監督からのオーダーを聞きつつ、自分なりの解釈やその時の流行りを提案したりもするようにしています。
撮影は制作工程において最後のセクションということもあり、実際に上がってきた作画素材で処理を考えることが多いのですが、ときどき事前の打ち合わせによっては「こういう撮影処理を入れたいからこういう素材にして欲しい」とこちらから先にお願いをすることもあります。これは作画や仕上げ作業が終わってからでは遅いので、早い段階で処理をイメージして監督や演出に意見を出すようにしています。
またTVシリーズのような膨大なカット数がある作品では、多くの撮影スタッフと作業するため、できるだけ考えやイメージは共有するようにしています。その中で良い方向に予想外のカットが上がってきたりするのは複数人で作っている環境ならではだと思います。

自身で撮影したカットがテレビで流れているのを初めて見た時は感動しましたし、今でも覚えています。
撮影は作業したカット映像がそのまま放映されることがほとんどなので、テレビに見覚えのあるカットが映っているのは不思議な気持ちになりますね。
あとは作品が話題になった時に撮影について触れていただいていたりするとうれしく思います。撮影はどちらかというとマイナーな職種なので、触れてくれる方はだいたい業界関係者だったりしますね(笑)

例えば現在、明確な目標が無いという方は、撮影に関わらずいろんなことを経験しておいて欲しいと思っています。アニメ・実写などジャンルを問わず映像作品を見ることや、接客アルバイトやイベント運営の経験なども役立つものです。そのどれもある程度やりきっていることがもちろん大切ですが。
若いスタッフが多いので、撮影業務内外で柔軟で自由な発想に助けられることもあります。技術面で未熟なのは当然なので、そういったことは入社後に実務経験を重ねて高めていって欲しいと思っています。