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アニメエキスポ2023レポート
報告:菊池雄一郎(「かぐや様は告らせたい」シリーズ・アニメーションプロデューサー)
アメリカ・ロサンゼルスにて2023年7月2日から5日まで開催された「Anime Expo 2023」にA-1 Picturesも参加しました。ようやくコロナ禍にも落ち着きが出て、現地にてイベント参加できたことをとてもうれしく思います。
私自身「Anime Expo」は初参加だったのですが、会場には熱狂的なファンが多く、様々なコスプレに身を包んでいたりと、来場された皆さんが大好きなイベントを各々に楽しんでいる姿がとても新鮮でした。お祭りのようなムードにも影響されてか、会場だけでなく宿泊しているホテルや街中でも、コスプレした参加者達が堂々と楽しそうに歩いていて、この瞬間だけ別世界に入ったようなとても不思議な感覚がありました。中には私が担当した「かぐや様は告らせたい」のコスプレをしている方もいらっしゃって、自分たちの制作した作品が世界中の方に愛されていることに感動しました。
今回は「Aniplex of America×A-1 Pictures Industry Panel」というパネル(=トークステージ)にて参加させていただきました。Aniplex of Americaと合同でのパネルということで、会場には2000人ほどの方が集まってくださっていたので、楽しんでいただけるかという不安と緊張の中での登壇となりました。
A-1 Picturesの登壇者は私・菊池のほか、「86―エイティシックス― (以下「86」)」キャラクターデザイン・総作画監督の川上哲也さん、海外クリエイターとの通訳や翻訳も担当している制作進行の牛尾健太、の3人です。
パネルの冒頭では、A-1 Picturesの作品紹介映像を上映、これまでの作品が流れると会場からは大きな歓声が上がっていました。海外ではアクション作品が特に評判が良いとは聞いていたのですが、ラブコメ作品への歓声もとても大きく、非常に興味深かったです。「86」や「かぐや様」、「ヲタ恋」は特に反響が大きかったですね!
なによりビックリしたのは感情を隠さず、真っすぐに声に出して制作者に思いを伝えてくれる姿勢で、自分が有名人になったかと錯覚してしまうくらいの愛情を感じました。
今回の登壇では「86」を題材に、初公開となる第23話の絵コンテや原画、動画といった実際の素材を使用しながら、アニメーションの制作工程をお話ししました。
日本のアニメが世界中に支持されている今、アニメがどのように制作されていてどんなスタッフが関わっているかを紹介することで、より普段見ているアニメへの理解を深めていただき、もっとアニメを好きになっていただけるのではないかと考えて企画した内容です。
作画素材をお見せしながら、レイアウト作業とは?原画とは?動画とは?といった説明をしていきました。例えば動画は特に大事な工程のひとつですが、どんな作業でなぜ大切なのか、といったことはなかなか知られていないので、詳しくお話しできたかなと思います。また、少々マニアックかなと思いつつ、タイムシートのことなどもお話ししました。
昨今、SNSを通じてアニメーターさんの絵に触れる機会は増えてきたとは思いますが、さらに掘り下げて、絵を動かすタイミングを指示するタイムシートだけで作品の質が変わるということもお伝えしたかったので、少しでも「なるほどなぁ~」となってくれた方がいればと願っています。
広い会場でたくさんの方がいらっしゃったので皆さんの様子が分かったわけではないのですが、とても熱心にメモしてくださった方もいたようで、非常にうれしかったですね。
続いて、「かぐや様」第3期において特殊EDを手掛けていただいた、フィリピン在住のアニメーター・Vercreekさんのビデオメッセージをご覧いただきました。
近年はVercreekさんのような海外のクリエイターが日本のアニメ制作に参加する機会が増えてきていて、作品の主要スタッフとして活躍するほど優秀な方も本当に多いです。Vercreekさんには、なぜ日本アニメに参加しているのか、どのように技術を培ったのかなど、海外クリエイター視点でのお話をしていただきましたが、そんな彼らの経歴やサクセスストーリーは、自分もこれから日本アニメに参加したいと考えている方々に希望を持ってもらえるのではないかと思います。
アニメ業界はどんどん進化しており、より多様性が必要となってきているので、我々も新しいチャレンジをしていかないとなりません。日々その要求に応えるべく考え続けています。
またアニメ業界は、国籍・人種を問わず、日本国内の方も海外の方も、いつでもどこにいても参加して活躍することができるユニークな世界です。大変なこともありますが、こんなにも自分たちの仕事に創造性があり、たくさんの方に評価していただける仕事も中々世の中には少ないのではないでしょうか。
いつか、今回のパネルやこのレポートをご覧いただいた方の中から、一緒に日本アニメの制作に携わってくれる方が現れることを、とても楽しみにしています。もちろんその際にはぜひA-1 Pictures制作作品に参加していただければと、心よりお待ちしております!
そして引き続き、A-1 Pictures制作のアニメをたくさん楽しんで頂けたらと思います!